こけし日記

読むことと書くことについて

2023年1月の読書記録

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ(友廣純訳)


前に読んだ『エデュケーション』(父親がサバイバリスト(終末論者)で学校に通わせてもらえなくて自力で大学に行ったアメリカの女性の自伝)とかこの間見た『罪の声』とかぶるところがあった。制度とか社会の間に落ち込んでしまってそこから抜け出せなくなってしまった人が声を上げることができなかったり、上げても聞いてもらえなかったりするが、聞いてもらうには事件とか有名になるとかで本人が何かしらの形で声を上げられる立場にならないと聞いてもらえないということを描いているような内容だった。



『ME TIME』池田千恵

この本の軸になっているのは、自分のための豊かな時間「ME TIME」を確保し、残った時間を相手のために使うという考え方。
それまで、私は仕事や家事優先でやりたいことを後回しにして時間ができたら勉強したり遊んだりしたり読書していたけど、そうしていたらいつまでたってもやりたいことはできないということに気づいた。
こういうちいさながまんを繰り返してしまうから、卑屈になってしまうのではないかというようなことを思った。

整体対話読本シリーズ『ある』(聞き手 鶴崎いずみ、話し手 川﨑智子)

去年読んだ『お金の話』がよかったので、また買ってみた。整体は正直うさんくさいと思っているけど、なんか説得力があるので読んでしまう。
つかみどころがないのに、何か大事なことを言っているような感じは尹雄大さんの本を読んだ時の感じと似ている。いろいろ発見が多い。

すごくざっとしたまとめになるが、エネルギーは停滞させてはいけないから循環させて回さないといけない。そのエネルギーというのはお金や怒りや体力や何かやりたいという気持ちなどもろもろ。で、それをうまく回さないと停滞して病気になるという話なのかなと思った。自分は「つくる人」という章が一番読んでよかった。いい意味で違う人になろうとすることをあきらめられた。

『アンクルトムの小屋』ハリエット・ビーチャー・ストウ、丸谷才一


内容は、トムが借金のかたにいろんなうちに売られていって、そこでいろんな出会いがあって、という一種のロードムービーで、並行してトムと一緒に売られていく予定だったハリーとその母エライザの逃亡劇とそれを追う奴隷商人が描かれる。この辺は地下鉄道で読んだからなんとなくなじみがあった。トムがかなり敬虔なキリスト教徒(それはかなり白人に都合のいい黒人奴隷像とイコールでもあるが)なので、キリスト道徳物語
だと思っていたが、意外とエンタメ要素もあり、思ったほど時間がかからず読めた。若草物語もそうだけどこの時代の本はキリスト教道徳の匂いがすごい。

 

インディペンデント出版物

『私みたいなやつでも生きていける世の中になってほしいから私は私みたいなやつのままでやっていくのだ!!』新原なりか

shikaku-online.shop-pro.jp

日記、離婚に関する文章、短歌などいままでウェブなどに発表されたテキストをまとめたZINE。
かなり正直にそして、書くことに真摯に向き合っている姿に心を打たれる。離婚の文章はものすごく共感。私も再婚したてのときに仕事がなくて海外で、妻しか居場所がない感じがしてすごく辛かったことがあって、それを思い出した。恐縮だが、自分の『書くことについてのノート』にも近さを感じた。またこういうエッセイ系のものを出される際は読んでみたい。

文学フリマ京都で買った本

出店者の人が結構買ってくれたので、見に行くと面白そうで結構買ってしまった。

『ヨソモノ紀行』神田匠

隣のブースで途中から遅れてこられていたけど、到着するなり行列!バカ売れ!という感じですごかったので私も購入させていただきました。人気のあるライターさんだそうです。めちゃおいしいチキン南蛮弁当を求めて高知に行った紀行文。私も去年高知に行ったのですが、存じ上げませんでした。行った場所が全くかぶっておらず、逆に面白かったです。次回は私もこのチキン南蛮弁当を食べたいと思います。

まとめてのご紹介ですみません。

『漢字パズル』KSプロジェクト 
四文字熟語を作るパズル。教材に使えるかもと思って購入。

『百日百首』阿波野巧也
百日間の日記とその間に書いた短歌。実は短歌はほとんど読まないがこの人のはとっつきやすかった。歌だけだとわからないが、日記と読むとどういう背景で書いたかわかりやすいからだろう。

『観ること』舟之川聖子

hitotobilab.thebase.in

以前インタビューさせていただいた鑑賞対話ファシリテーターの舟之川聖子さんのこれまでの日記や鑑賞記録をまとめたもの。
お子さんが部活について、部活が青春っていうのはそういうことにしときたい人がいるってだけだというようなことを言っておられて、10代で人の意見に流されず、自分の意見を持っていてすごい!と思いました。
また、近所に住むおばあさんとの交流や、読み聞かせボランティアとして学校にかかわっていた舟之川さんがボランティアを卒業する日の文章などからは、小さな交流を大切にしながら生きることが社会運動なのだということが伝わってきました。

『やめられません勝つまでは』
パチンコが趣味の方による、負けた記録。売っていたのが女性だったので驚きました。アニメの台があること、それが新たなファンを取り込んでいることなど、入ったことのない場所の知られざる実態が知れてとても面白い読み物でした。

AMU』芝々

亡くなったおばあさんの編み物を引き継いで編んだ記録。手芸は前から興味のあるテーマだったので、手にとりました。編むことでおばあさんと対話し、そしてできた編み物がまた新しく人をつなげてくれて、編み物の可能性を教えてくれた一冊です。

すでにツイートしたものについてはこちら。