『母親になって後悔してる』オルナ・ドーナト (著)、鹿田昌美訳
女性が身体とか自然の方に割り当てられてあたかも子どもを産むのが当然みたいになってるのに意義申し立てをしている文章を今まで読んだことがなかったので、すごくよかった。あと、新自由主義社会では後悔は忌むべき感情とされているという分析も面白かった。たしかに私も子どもがほしいかどうかはっきりわからないのに、何かしておいた方がいいかもとずっと悩んでいたけど、それは、「後悔しないように」という気持ちからだった。
「後悔しない選択を」という言葉が、「正しい選択をしなければ」というプレッシャーとなる。後悔しても別にいいんじゃないか、人の考えは変わるんだし、というような柔軟さが減っているような気がする。後悔しないが行きすぎると返って生き方を狭めるのではないか。本筋とは離れるが、読みながらそんなことを考えた。
『水納島再訪』橋本倫史
書評では主に「彼女たちの断片」に触れたが、他の2作品もすごくよかった。
小説の『赤い砂を蹴る』には、共通するような人物も出てくる。
お母さんの津島佑子の小説も読みたくなった。
『きみはいい子』中脇初枝
どれも胸がぎゅっと詰まるような作品。
子育てとか、児童虐待を扱った連作短編集。
全体的に読み応えあってよかった。もうちょっと日本の家政学とか生活学の歴史とかもあるのかなと思ったけど、そこまではなかった。佐藤靜さんの奴隷と家事労働と移民の話と、藤原辰史さんと阿古真理さんの対談が面白かった。
『現代社会はどこに向かうか』見田宗介
亡くなって悲しい。これが遺作になるのかな。
『いつかたこぶねになる日』小津夜景
買って積読状態でやっと読めた。結構今まで読んだことないものを読んだっていう新鮮な文章だった。フランスとか漢詩っていう対象もそうだし、なんか話が思いもよらないところに進む感じもそうだし、文体も新鮮でよかった。
・『恋じゃねえから』渡辺ペコ
中学時代、友達と付き合ってた塾の先生がアーティストになってて、友達がモデルかもしれない作品を作ってたってところから話が始まる。
タイトルが最初コメディかと思ってたけど、読み進むにつれて、関係の非対称性を端的に表した言葉で、この話を一言で言い表してることに気付いて、すごい!と思った。『1122』もすごいよかったから楽しみ。
・『違国日記』9巻 ヤマシタトモコ
槙生が次女で、好きなことやってて、たまたま朝を引き取った話なのがいいなと思った。こういう話、槙生が長女とかで義務感で子育てみたいな感じにも持ってけるけど、そうならないところが新鮮でいいなと思う。
・『奈津の蔵』尾瀬あきら
めちゃめちゃ面白かった!
男が戦争でいなくなって、女がこれまで禁じられていた酒造りに携わる話。
ただ蔵はずっと継いでいくものっていう物語のいちばん根底はちょっとしんどい・・・。
・『ながたんと青と』磯谷友紀
舞台は戦後すぐの京都の料亭で、見合いで政略結婚的に15歳差で結婚した夫婦が料亭を立て直す話。
細腕繁盛記的なやつかと思いきや、年の差婚、妻側の姓、血の繋がりのない家族など、要素が今っぽい。
あんまり意地悪な人とか嫌な人が出てこないので、あっさり読めるのがいい。
・『おうちさよなら日記』杉山由香
母の死をきっかけに実家を片付けた建築家の日記。
実家じまいめちゃ興味あるので買ってみた。
実家じまいって重くなりそうだけど、この本は文庫本サイズで写真が多くて、文章も重い感じではないので、気が向いた時に読める軽めの作りがいい。