こけし日記

太田明日香のブログです。

2024年に見ておもしろかった映画

DVD、映画館、上映会、配信などで見ておもしろかった映画についてまとめたいと思います。

(順不同)

 

1.エイリアン ロムルス

エイリアンの最新作。
決まった年数労働しないと移住できない星で働く女性が主人公。弟代わりのアンドロイドと2人ぐらし。友人が見つけてきた廃船の冷凍ポッドを使って移住しようと目論むが、そこに大量のエイリアンが・・・。


エイリアンを見るのは前作に続き2回目。前作のエイリアンはつっこみどころが多かったし、途中でアンドロイドが笛を吹いたり、アンドロイド同士でキスしたり、よくわからなかった。

今回のエイリアンは、わかりやすくエイリアン対人間でよかった。
アンドロイドがいないとドアが開けられないっていうシーンが何回も出てくるんだけど、自分のスマホなのにパスワード忘れてロックかかって開けないみたいなイライラを思い出して今っぽい設定で印象に残った。
あと、主人公がめちゃくちゃ体力があるとか、銃の扱いに長けているようなスーパーウーマンじゃなくて、銃の性能やアンドロイドのおかげで生き残ったっていうところが、普通の主人公すぎてよかった。

2.水俣曼荼羅

第一部第二部第三部までトータルで372分、長い! 
滋賀の上映会で見て、監督の原一男トークショーもあったので大満足でした◎

水俣病というと石牟礼道子とか、尾方正人とかのイメージがあって、赦しとか近代化批判とか患者さんを神聖化するような作品が多い印象だが、原監督はずっと医療と病気と法の話を撮っていて、改めて水俣病は「人が作り出した公害によって人が病気になった」ということを描いていたのがよかった。

3.おとうと

幸田文の名作を映画化。主人公は17歳のげん。父は高名な作家、継母は病弱、弟は不良少年だったが結核になってしまい、看病をすることに。脚本は水木洋子、監督は市川崑

最初主人公のげんに岸恵子はきれいすぎると思ったのだが、見ているうちにどんどん小説のげんと重なってきて、最後感涙。
原作のポイントをおさえた物語運びと、脇を固める名優がよかった。

4.ブラックバード、ブラックベリー、私は私。

去年大阪アジアン映画祭で見たジョージア映画。ラストになんじゃこの映画と衝撃を受けたのが、今年公開されることになったので、ぜひ見てほしい!

主人公のエテロは48歳独身で食料品雑貨店を営んでいる。あることをきっかけに、男性と初めて肉体関係をもち、独身であることや処女であることを揶揄してくる周囲の声をもろともせずに、自分の道を突き進む。


エテロが美魔女でないどこでもいそうな中年女性なのがものすごくよかった。あと、エテロの住む村は閉鎖的なんだけど、エテロが仕入れに行く町には素敵な女性カップルがいたりして、いろんな女性の生き様が写されているのもよかった。
ジョージアの景色や町の感じも楽めた。

5.本日公休

去年一番楽しみにしていて真っ先に見に行った映画。私はこういうちょっとノスタルジックな人間ドラマの外国映画に弱い。

長年台湾で理髪師をしてきた主人公の女性が、得意顧客の最後の散髪に車を走らせる。
私は女性が運転する映画が割と好きなのだが、『本日公休』もそのタイプの映画。主人公は手に職もって自立している女性なんだけど、ただ一人で自立ってだけでなくて、いろんな人に支えられてるってことも描かれててよかった。

こちらの主人公も美魔女じゃないどこにでもいそうな中年女性でよかった。
あと、理髪店のセットとか、猫とか主人公の服装とか持っている水筒とか、小道具とかセットがいちいちかわいくて、この世界観に入りたくなる。
物語、セット、ぜんぶコンパクトにまとまった映画って感じの映画でほんとによかった。

6.パストライブス

映画ってただのエンタメでなくて、人生の追体験あるいは、あり得たかもしれない人生の俯瞰って側面もあると思うんだけど、パストライブスはまさにそういう感じの映画だった。

幼馴染の二人、ノラとヘソン。ノラは家族とカナダへ、その後アメリカへ移住。ヘソンは韓国で。離れ離れになった二人は20代になって、Facebookで再開。再び交流が始まるが、ひょんなことからまた離れ離れになってしまう。やがて結婚したノラのもとに、ヘソンが会いに来ることになって・・・。


最初はラブストーリーだと思って見始めたけど、どっちかっていうと移民映画だった。
たとえルーツは同じでも、移民すると言葉や習慣を変えて移民先になじむ必要があって、ルーツとはだいぶ離れてしまう。
その変化は悲しいことではなくて、人間が生きていたら絶対に起こりうることだ。変わらない思いを描くのが物語や映画だと思われがちだけど、長い時間をかけて起こる人の変化を、限られた時間で、最小限の人数で描いている一番好きな感じの映画だった。

7.Winny

ファイル交換ソフトWinnyを開発し、早逝した金子勇著作権法違反裁判を描いた映画。

たまたま出張先で見るものが特になかったので見始めたのだが、思いがけず引き込まれた。主人公を演じている東出昌大はこの役のために太ったそうだが、最初全然気づかないくらい野暮ったい感じだった。
あまり派手な演出がなく、淡々と事実に基づいて描いているような感じで、裁判シーンなどもきちんとしており、地味だが良作。

 

 

8. オキナワより愛を込めて

沖縄の写真家の石川真生さんのドキュメンタリー映画

 


石川さんは米軍基地で働く米兵が来るバーで、自身も働きながら接客をする女性たちを撮った。石川さん自身沖縄出身で高校時代に基地闘争に参加し、沖縄に基地が集中することに憤りを感じていた。石川さんは米兵や、バーで働く女性たちを撮りながら、色眼鏡で見られていたかれらもまた一人の人間であることを映し出していく。
特に大腸がんの石川さんが、人工肛門の手当をするシーンでは、石川さん自身も被写体となる覚悟を感じられた。

たまたま見に行った日が監督トークの日で、監督の声を聞けたこともよかった。音楽は監督が敬愛する沖縄のアーティストの音楽が使われていて、監督の石川さんや、沖縄への若いアーティストへの愛が感じられた一作だった。

 

9.〈主婦〉の学校

アイスランドにある全寮制の家政学校の1年を追いかけたドキュメンタリー。
もともとは結婚前の女性が家事を学ぶ場として作られたが、1990年代に共学化して男性も入れるようになった。

黙々と手仕事をする生徒たちの姿は、それだけで心を穏やかにするものがある。環境映像としてずっと流しておきたいくらい。

 

10.緑の牢獄 

西表島に住む台湾生まれの女性のドキュメンタリー。西表島には炭鉱があり、彼女の両親はそこで労働者をあっせんする仕事をしていた。両親も亡くなり、子どもは出ていき、家族は犬と下宿している青年が一人。

彼女の語りは日本語と台湾語で、故郷から離れた地で一人老後を過ごす女性の姿にものすごい孤独を感じてしまう。炭鉱跡は今は緑に覆われていて、どんな様子だったか想像するのも難しい。ここでかつて多くの人が働いていたことも、緑に飲み込まれてわからない。そのことに、過ぎ去った時間の長さや、忘れることの残酷さなどを感じた。

炭鉱パートは、ふんどし姿の青年が映し出されて、不思議な再現映像だったのだが、もぐらのあなぐらさんがそれについて考察していて、なるほどと思った。

nomorelines.hatenadiary.org


また今年もいろんなおもしろい映画が見られたらうれしいです。