こけし日記

読むことと書くことについて

文学フリマ京都8に出て思ったこと

2024年1月14日にみやこめっせで開催された文学フリマ8に出ました。
639出店・707ブース、出店者・一般来場者あわせ3,643人、過去最大だったそうです。

今年は、委託で販売してくれるイベント以外の出店は控えようと思って、最後のイベントになります。
来てくださった方、買ってくださった方、ありがとうございました。
新刊も出さなかったので、売り上げはまずまずでした。

前は目の前で立ち読みされた方が買わないといちいち凹んでいたのですが、
今回は全然そういうことを思わなくて、好きにしてくださ~いという気分でした。
もっと早くこの境地に至りたかった・・・。

私はなんでほかの人みたいに楽しめないんだろうというのが、いつも気になってました。
元小説家の豊島ミホさんが小説家をやめた経緯を綴った『大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル』の中で、豊島さんが小説家をやめた原因の一因として、自分ルールでなく相手ルールに合わせすぎたことを挙げていました。

すごく耳が痛い。
私は自分のしたいことをしたくて出版レーベルをやってたはずだったのに、
いつの間にか出店し続けるうちに、だんだん楽しめなくなってきていました。
誰かに発掘されたい、また出版社から本を出したい、ここで誰かに見つけてもらって原稿依頼が欲しいといった気持ちを捨てきれませんでした。
私が注目されたかった界隈で話題になるものとか売れるものを作らないといけない、その価値観に寄せていかないといけないといった気持ちに支配されていたように思います。

一冊の本やイベントで「自分が発掘されて一発逆転したい」みたいな期待がすごくありました。自分ルールで始めたつもりが、知らず知らずのうちに相手ルールに乗っかっていたのです。

でも、昨日は「今日が最後の文フリ」と思うと、気持ちがすごく穏やかでした。
『言葉の地層』を自分で出して、去年1年売り歩いてみて、自主制作に関しては自分の実力で行けるのはここまでくらいかなとわかり、やりたいことはやりきったという気持ちもあり、ある程度納得できたので、しばらく文フリには出ないことに決めていたからです。

自分にとってこの一年は大きな挑戦でしたが、その結果は期待を裏切るものでした。
期待が大きすぎたのです。
期待が大きすぎるというのは、自分を大きく見積もりすぎていたということでした。
また、それと同時に一冊の本やイベントで「一発逆転はない」ということが、出続けてよくわかりました。
なんていうか、いい意味で現実が見えました。
もしかしたらもうすでに出す前から分かっていたのかもしれません。
それでもやってみたいと思わせる何かが出版にはあります。
文フリに出ながら、少しずつ現実を受け入れ、自分の身の丈に納得し、それを受け入れる準備をしていたのかもしれません。

昨日は数年ぶりの友人知人に会え、まるで同窓会でした。
こうやって仕事でも同級生でもない人と出会え、近況を確かめ合える場があるって幸せなことだなと思って、久しぶりに楽しいなと思いました。

新規参入する人、ずっとで続けてる人、一回だけでやめちゃう人、商業デビューして卒業する人、文フリにはいろいろな方がいると思います。
きっと自分はその中の数多いる出店者の一人なのでしょう。
だけど自分はどこかで自分は特別だと思いたかった。
でもホンモノじゃないと自分でもうっすらわかってて、だけど、それを受け入れられなかった。
1年やってみて、やっと自分の平凡さを受け入れられたような感じです。
そして、改めてずっと続けている人の根気や熱意や創作欲に尊敬の念を抱きました。

今後の新規参入者と出店者の皆さんに幸あらんことを。


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