Twitterでこんな話題を見た。
ある経済誌で、編集者が勧めるオススメ本という特集で、
編集者の男女比が6:1であるということを批判的に書いたツイートがあって、
https://twitter.com/akaifusen/status/1026424580011745283
リプライでないものを拾っていいのかわからないのですが、反応を頂いたことを受けてもう少し書きます。
— 小林えみ:Emi Kobayashi (@koba_editor) August 6, 2018
1)個人批判ではなくて社会を問うてます
絶対言われるかな……、と思ったのですが「こういう企画者の神経を疑う」ではなく、「こうなる社会」と書いてます。だから私の仕事でも男性が多い→ https://t.co/0IQws3kcQG
それに対して唯一女性として取り上げられていた編集者や、
おそらく担当の編集者であろう人が、いろいろ意見を書いていた。
少し前に自分の中で「編集」という仕事について考える手がかりに、と、尊敬する編集者の名前を手帳に書き出した。10人を少し超えたそのメモの中で女性は2人だった。私が編集者にブックガイド等、何か依頼する機会があれば、きっとその方たちを中心に選んでしまう。バランスを考えるべきなのか。悩む。
— tomoka watanabe (@scentofmatin) August 6, 2018
7名の編集者に3冊ずつ選んでもらい、それについて書いてもらう、という特集を担当しました。そして、7名中女性が1人だけだったことを残念に思う旨のツイートを読みました。このことをどう受け止めたらいいか、この1時間くらいずっと考えていますが、気持ちが沈んでうまく思考できません。
— 北條一浩 (@akaifusen) August 6, 2018
また、担当の編集者であろう人は、同じ雑誌で読書日記の連載があるが、
その男女比は4:2だとも書いていた。
ちなみに「週刊エコノミスト」には「読書日記」というページがあり、週替わりで6人の方に書いてもらってますが、女性が4人、男性が2人です。
— 北條一浩 (@akaifusen) August 6, 2018
・・・
すべてを男女同数にすべきかわたしは分からない。
おそらくその経済誌は読者のほとんどが男性であることや、
担当編集者が純粋に頼みたいという編集者の比率が
たまたまそうなっただけということ、
またおそらくその担当編集者は社員の人ではなさそうなので、
自分だけの判断ではないなど、いろいろあると思う。
でもちょっと違和感もある。
書き手にフリーとかが多そうな読書日記の連載の男女比を持ち出しているけど、
特集の男女比が批判されたことへの反論足りうるのか。
というのも、この間東京医科大の入試で
性別で不当に点数の切り下げを行なっていたというニュースがあったが、
あれと似たような構造を感じるからだ。
編集者の女性が一人しか取り上げられていないというのは、
そもそも女性が編集者として残りにくいからじゃないかと思う。
出版社で女性が編集者になりにくく、
下請けやフリーにならざるをえないという状況もあると思う。
それ以前に、採用されにくかったり、
女性が編集部ではなく、アシスタントみたいな部署に回されがちということもある。
別にこのtweetをした人たちを批判するわけじゃない。
そして、わたしが見てきたり感じてきたことだって一部にすぎない。
けど、わたしがずっと出版業界に感じていたもやもやを
そのtweetをきっかけに思い出した。
・・・
なんか出版業界って、すごい男の人が多い業界で、入るのも残るのも難しいと思う。
出版社の社員は、会社にもよると思うけど、
企画を出してそれが売れないと辞めるとか異動とかが結構ある。
それに、締切がきつかったりして結構激務だ。
だから採用のときに女の人より男の人をとるとか、
女の人が結婚したり出産したらやめないといけないというようなことがある。
あと、昔は暴言とか暴力とかを教育と称して行なうような会社もあった。
そういう業界はやっぱり女の人が残りにくい。
女の人はどうするかというと、だいたいフリーになる。
フリーで編集者はあんまり食えなかったりするから、
より仕事のありそうな記者とか校正とかで仕事する人が多い気がする。
残りたかったら結婚しなきゃいいみたいな反論があるかもしれないけど、
でもなんで男の人は結婚して残れるのに、
女だからって結婚がまんしないといけないのかわからない。
だからやっぱり仕事したかったら、
フリーになって下請けで子育てとか家事の合間に仕事をすることになることが多い。
(フリーになる人はもちろん独身の人もいる)。
一方で、雑誌の編集長とか出版社の社長とか決裁権を持っている人って男の人が多い。
編集部も男の人が多くて、女の人に「女性の目線」を期待されたりするけど、
それはほんとの女の目線ていうより、男の人が思う女の目線だったりする。
・・・
カナダにいたとき、フェミニストマガジンというのがあるというのを知った。
女の人(とトランスの人たち)が女の人(とトランスの人たち)のために作っている雑誌だ。
ちなみにこういう雑誌はカナダだけじゃなくイギリスとかアメリカにもある。
カナダで見たのはこのshamelessという雑誌だ。
特集はいろいろだ。
政治、服、食べ物、音楽、メンタルヘルス、DIYいろいろある。
shamelessmag.com
たとえば服でもぜんぜん違う。目次を見てみよう。
Issue 26 (Summer 2014): The Fashion Issue – Shameless Magazine
The colonial history and present of the point blanket
これは植民地主義の話。
カナダを植民地にするため、先住民を殺すために、ブランケットに病原菌をつけて、先住民に贈り物をした。
Finding clothes in a fat phobic world
これは太っている人が服をどう着るかという話。
Issue 31 (Winter 2015): The Alternative Beauty Issue – Shameless Magazine
この号は美しさについて。
Gender variance in fashion and celebrity culture
セレブカルチャーとかファッションにおけるジェンダーのばらつきについて
Double standards for women athletes
女性アスリートがダブルスタンダードにおかれることについて
と結構本質をついたり、政治的な切り口のものが多い。
わたしは、これはすごく重要なことだと思う。
自分たちで、自分たちのために作ってる感がある。
自分たちのために自分たちの言いたいことを言える場を作れるって、
すばらしいことだ。
なんか日本にいたときはそういう視点自体奪われてる感があった。
その差ってなんなんだろう。
そこには、やっぱりそういう業界構造も関係してたんじゃないのかと思う。
特集はこちらです。
※追記
編集者7人の件、記事を編集した方もその記事を批判した方も個人的に好きなので困ってしまうのだけど、今回の記事に関しては選者の無意識のジェンダー観がでてしまったとか業界の歪みが不可避的に現れてしまったとかにするのは適切じゃないと思う。誰かや何かを悪者にするような案件じゃない。今回は。
— 浅山太一@発売中『内側から見る 創価学会と公明党』 (@girugamera) August 7, 2018
という意見もあるみたいです。