こけし日記

「読む」にまつわる日記

2020年の10冊

昔の本や若いころ読んだことのある本をもう一回読むことが多い1年だった。
去年は若いころ理解できなかった文章がわかるようになったり、若い頃よくわかんなかった文章が読めるようになっていたのがうれしかった。

松下竜一『暗闇の思想を』

   
1973年、大分の火力発電所建設を阻止した住民運動のルポ。
松下は火力発電所反対運動のリーダーもしていた。
松下竜一の本は2011年の福島の原発事故のときにちょっと話題になって、その時から読んでみたかった。

被支配者のくせに支配者のようにものを考えていたら、すぐに支配者にそれを利用されるというようなことが書いていて、今は生活感情で反対をしたらすぐ「対案を示せ」と言われるけど、政策を考えるのは政治家の仕事だって言ってたのがよかった。
政治に対していろいろ言うのは、かしこぶらずにやればいいのかとわかって非常に感銘を受けた。

まだ3冊くらいしか読んだことないけど、今ほとんど新刊で手に入る本がなくて残念。

・ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』

   


アメリカに移民した日本人移民の女性たちの話。
人称が「わたしたちは」で、無名の女性たちの無数の話が折り重なって、日系人の歴史を描くっていうようなスタイルで、そういう小説いままで読んだことがなかった。
ジュリー・オオツカはいろんな日系人の女性や日本人移民の女性から聞いた話をもとに、史実を調べて書いたそうだ。
ものすごく個人の話に立脚していながら、それなのに匿名性が強くて、壮大なものを描いてるっていうところがすごく面白かった。
ある日系人の一家が戦争中にアメリカで強制収容所に入れられる『あのころ、天皇は神だった』も読むとより深く味わえる。

・陳凱歌『私の紅衛兵時代』

   


『さらば わが愛、覇王別姫』の監督が、文革時代を紅衛兵として過ごした回顧録
異様に格調高くてうまい文章で、これは漢詩のなせる技かと思った。
わたしは農村とかに行かされて農業させられるのも絶対嫌だなと思ったけど、
やっぱ革命ってノリノリで支配者を持ち上げてて、
本人もすごい使命感を持ってて、農村でも目的を見つけそこでなじんで、
それなりに楽しく過ごしていたから、それも含めて革命怖いな〜と思った。

大塚英志の評論『「彼女たち」の連合赤軍』など

   


大学生のときフェミニズムとか言われてもあんまりピンときてなかった。
今読んだらMeTooが話題になったり、社会運動内での女性差別が批判されてるから、
そういうことが連合赤軍でもあったっていうことなのかというのがわかった。
結構先見性のある本だと思う。今読んだ方が面白かった。

 

・緒方正人『チッソは私であった』『常世の舟を漕ぎて』

   


水俣病未認定患者訴訟運動に関わっていたが、訴訟運動から離脱し、独自の道を行った漁師の緒方正人の本。
ずっと手に入らなかった状態だったが、去年河出文庫に入ったので読んでみた。
水俣病のことは何年か前に『みな、やっとの思いで坂を登る』という、患者相談をしている相思社の永野三智の本を読んで、今も続く問題であると知って結構ショックだった。
そのあと、九州の国道3号線をテーマに、その道沿いであったいろんな歴史から九州を見るという森元斎の『国道3号線』を読んだら緒方正人の話が出てきたので、いいタイミングだったので読んでみた。

緒方は被害者の枠から抜け出た人なんだと思うけど、どういう経緯でそうなったのか知りたかった。しかし、緒方の文章はときどき観念的であったり、抽象的であったりして、ところどころ理解が難しかった。
どちらかというと、『チッソは私であった』よりも『常世の舟を漕ぎて』の方が整理されてるし、読みやすかった。
また読むと思う。

石原吉郎

   

シベリアに8年抑留された石原吉郎の詩と文章。
石原の文章は前から好きだったけど、緊急事態宣言のときにまた読んでみた。

www.saudadebooks.com

www.saudadebooks.com



石原の文章は自己完結的で異様に迫力があって人を寄せ付けないところがある。
そこがいい。
わたしもこういうのを書きたいと思ってたまに読む。
石原の文章はいつも文章の迫力で読んでしまうんだけど、結局何が言いたいんだろうってなるときもあって、ところどころ意味がわからないところがあったけど、何遍も読んだらだんだんわかってきてうれしかった。

橋本治桃尻娘シリーズ

  


ずっと読みたかったけど、読んだことなかったので読んでみた。
誰の目線で読むかで感想変わりそうだけど、『無花果少年と瓜売小僧』がいちばん面白かった。
若い時に読んだら、男は楽しそうでいいなと思うだろうなと思った。
読みながら、自分は若いときからああいう万年青年みたいな感じの男子に、いいな〜楽しそうでという憧れの気持ちが強くて、どっかで女なんかおもんないなと思っていたことを思い出した。
どうりでシスターフッドとか言われてもよくわかんないはずだと思った。
80年代はまだそういうのあんまりなかったけど、今は女の関係についての本もいっぱい増えてきてよかったなと思った。

・尹雄大『異聞風土記

   

去年読んでよかった本の一つ。レビューも書けてうれしかった。

qjweb.jp


個人史を書きながら広がりがあって、媚びがなくて独立してるけど、誰にも開かれているような文章が理想だ。
『異聞風土記』はそういう感じの本だった。
わたしもこういう感じで文章を書けるようになりたい。

渡辺ペコ『1122』

   

仲良しだけどセックスレスの一子と二矢(おとや)。
一子は二矢に公認不倫を提案、二矢はお花の教室で知り合った美月(既婚)と付き合っているが・・・という話。
女性相談センターの人と話したときに、セックスレス相談は実はすごく多くて、
相談まで来れたらいいけど、その手前で悩んでる人が多いっていう話を聞いたことがある。
だから、こういうテーマが漫画で表現されたことがまず素晴らしい。

1巻から夢中で読んで、グサグサきすぎて出るたびに感想書けなかった。
本当に最後まで読むのが辛かったけど、読めてよかった。
パートナーシップとか、愛とか、セックスとかを全部一人の人だけに求めすぎると、あんまりよくないんじゃないか、ということを読みながら思った。
結婚しててパートナーシップに悩みがある人は是非読んでほしい。

近藤聡乃『A子さんの恋人』

   

最初は軽やかなシティーガールとシティーボーイの恋愛漫画✖️美大あるある✖️谷根千、阿佐ヶ谷、ニューヨークまちあるき漫画みたいな感じで読んでたら、
どんどん内面に入ってったのが面白かった。
ストーリーでおもしろいことが起こってぐいぐい見せるって話もいいけど、
こんなささいな言葉のひっかかりの根元をあれこれたどって、
ラストまで引っ張って大団円みたいな話の作り方できるんだ!って感動した。
若いときの自分のやり残しや思い残しを救うようなラストがすごいよかった。

読みながら、ずっと自分の若い時のいろんなやり残しとか思い残しを
引きずっていることが辛いと思ってたけど、この10年くらいの間にそれは解消されていることに気付いて、それもすごいよかった。

2018年分も見てください。

kokeshiwabuki.hatenablog.com