こけし日記

読むことと書くことについて

2018年の5冊

2018年もいろいろ読んだ。
2018年の新刊中心、Twitter等に感想書いたものをまとめてみました。
順不同、敬称略でお届けします。


八九六四/安田峰俊

ダントツで面白かった。
天安門事件の関係者60人以上に
10年以上かけて聞き取りしたルポ。
カナダにいた時、天安門事件で亡命した人の話とか、
事件のこと知らない中国人留学生の話を聞いたことあったので、
興味あった。
あと、安田さんは文体とかスタンスとか割とフラットで読みやすい。
エンタメ感もあってちょうどいい。
安田さんは『さいはての中国』で、
カナダで教育で南京大虐殺について教えてる団体のルポも書いてて、
そっちも面白かった。
同い年なので心の底で応援している。


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地下鉄道/コルソン・ホワイトヘッド著・谷崎由依


奴隷制度の残る19世紀のアメリカが舞台。
奴隷の少女コーラが綿花農園から逃げ出す話。
地下鉄道は奴隷を逃がすための地下組織の名称で実際にあったんだけど、
作者は本当に地下鉄があったって設定で書いてて、
いろんな場所へ逃げながら、キャラが入れ替わり立ち代わり出て来る逃亡劇
エンタメとしても奴隷の歴史小説としても読めて、勉強にもなってよかった。
ちなみに訳者の谷崎さんは小説も書いてて、そっちもオススメです。

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カミングアウト/砂川秀樹

性的マイノリティがどうやってカミングアウトするかや、
カミングアウトしたときの周りの反応はどうだったかを、
いろんな人への聞き取りによって明らかにした本。
当事者の声が多く、専門用語が少なく、読みやすくて良い。
カミングアウトというと、当事者の問題と思われがちだけど、
本当に問題にされているのは、社会の側だと思った。
誰を愛そうが普通になれば、そもそもカミングアウトなんて言葉も、
カミングアウトすることで悩むかも関係なくなると思った。


みなやっとの思いで坂をのぼる/永野三智

水俣病の患者相談をやっている相思社の永野三智さんによる
患者相談記録をまとめたもの。
石牟礼道子の『苦海浄土』のイメージや、教科書の白黒写真のイメージがあって、
水俣病は50年以上も前の、大昔のことで、解決済みだと思っていた。
だけど、いまだに自分が水俣病であることに気付かないで来るしんでいる。
患者さんの生の声がまとめられていて、どんなに苦しいことなのか、
どんな差別があったのか、ということが、伝わってくる。

原爆の資料を読んでもわかることだけど、
被害のしわ寄せが行くのは生活が大変な人で、
その人たちにしわ寄せがいってよけいに貧困に陥ったり、
貧困で病気が悪化したり、声を上げられずにいる。
公害や戦争といっしょにはできないけど、これから災害が多くなる時代で、
こういう構造が繰り返される世の中になるんじゃないかという危惧もある。
どうしたらいいんだろうと思いながら読んだ。

 

彗星の孤独/寺尾紗穂

ミュージシャンの寺尾紗穂さんのエッセイ集。
寺尾さんにはミュージシャンのほかにノンフィクション作家、
随筆家といろんな顔がある。
植本一子さんのエッセイでそのお名前を知って、歌を聞いて衝撃だった。
そこから南洋に関する本や原発労働者についての本も
お書きになっていることを知って、すごく気になる人になった。

わたしはずっと書いてみたい、調べてみたいって思っても、
専門家じゃないしって足踏みしてた部分があった。
けど、寺尾さんが著書の中で、アカデミズムに対して、
すごく厳密に物事を定義してその決まりの中でやっているのはわかるけど、
その決まりの中でしか書けないのは、一般庶民の感覚とはずれているし、
窮屈だと書いていた部分を読んで、ああ、そうだなあと思った。
わたしも、ちょっとそういうところから離れてものを書いてみたい時期だったので、
なんか、すごく励まされてよかった。

 
また今年もたくさんいい本が読めたらいいなと思います。