こけし日記

読むことと書くことについて

書いてる限り作家でライター『三行で撃つ』近藤康太郎

読んだ理由
去年仕事がずっと辛かった。
わたしは10年ほどフリーでライターと編集者をしている。
2018年に著書を出したあと、もっと自分の名前と作家性を出したような文章を書きたいと思うようになってきた。
しかし、去年は引き受けていた編集の仕事の負担が大きく、全然自分の文章を書くことができなかった。さらに、去年は自分の身近な人が何人も本を出し、どれも評判がよかった。本来はおめでたいことなのだが、わたしは自分の余裕のなさのせいで素直に喜べず辛い一年だった。
そんなときにたまたまライターの碇雪恵さんのブログで紹介されていたこの文章にぐっときて、この本を手にとった。

   



『三行で撃つ』著者の近藤さんは、1日必ず2時間本を開けると。うち1時間はなんでも好きなものを読み、1時間は日本と海外文学の古典、社会科学あるいは自然科学、詩集から選んで読むのがいいと書いていた。それはある種の「苦行に似たトレーニング」だとした上で、しかしプロである以上は最低限の筋トレだという。めちゃくちゃ耳が痛い!


文章論やライター生き残り術に関する読み物は、近頃ではツイッターやnoteに溢れている。しかし、だいたいが初心者向けで知っていることが多く、中級者向けのコンテンツが少ないように感じていた。
碇さんの文章を読み、なるほどプロはこのようにして鍛錬するのか(お前もプロだろ、ということは置いておいて)、と思ったので、さっそく読んでみることにした。

書くこととトレーニン
この本では、「このライターは、まあまあ書けるよ」と認められるくらいのレベルになるためのコツが25個紹介されている。
またビギナーからプロまで、レベル別に使える技術が広く紹介されている。
わたしはこの本では、書くということについての心構えと文章を鍛錬の方法について、得るところが多かった。

文章というのは、切り口やものの見方、それをどう表現するか、さらにそれをどう広く人に読んでもらうか、という3つのスキルが必要だ。
そしてそのスキルには才能や取り替えの効かない個性の部分と、技術で高められる部分がある。
「書か(け)ない」人は才能を言い訳にすることが多いが、この本はまずそんな「書か(け)ない」言い訳を許さない。
「才能」や「コネ」などを言い訳にしようとする者に対して非常に手厳しい。
一方で、そこを乗り越え書こうとする者には、とても親切に手を差し伸べてくれている。

著者のライターや作家の定義はシンプルだ。
職業としているか、知名度がどれくらいか、著書があるかどうか、ということは問わない。
ただ書けと言う。

作品を書いているあいだは、作家なんです。記事を書いているあいだだけ、ライターなんです。書かなくなったら、そのときは作家が死滅したのです。


そして、この関門の乗り越えた人に向けて、さまざまなトレーニング方法を提示する。
著者が勧めるのは、新聞書評、辞書の活用法、読書、書く時間を決めることだ。
詳細は是非読んでいただきたい。

感銘を受けた点
著者は、文章というのは書かかれた限り誰か読む人がいる。そして、読む人がいるのは、必要とされている。だから、まずは書かない限りは始まらない、と言う。
ところが、文章は書いたら誰か読む人がいるとはいっても、それを信じきれない部分もある。

特にネットでものを書くと、いいねの数を人と比べてしまったり、エゴサをして自分の評価を探したり、課金の金額で自分の文章が評価されるように思ってしまったりする。
そうすると、本来文章は誰かと比べるものではないのに、自分の文章には力がないからいいねが少ないとか、エゴサしても評価がないとか、課金の金額が少ないといったふうに思ってしまう。そして、自分の書くものの力を信じられなくなる。

また、とくに近頃は、ライターはコミュニティに入ってつながりを作ることや、ブログやnoteでアウトプットをすることが推奨されている。
もちろんそういったことが仕事を融通しあったり、弱い立場のフリーランスが生き残るために役立ったり、知名度をあげたり、ファンを作ったりするのに役立つこともあるだろう。
一方、そこでの社交が中心になって書くことが疎かになることもある。
この本で紹介されているトレーニングは一人で鍛錬できるものが大半なので、
ネットでの書き物やコミュニティーやつながりに、行き詰まりを感じている人はヒントがもらえそうだった。


そして、何よりこの本のいいところは、自分の文章は上手くないと再確認できるところだ。
ここに示されたトレーニングをすれば、書く関門を乗り越えることができた人の多くは、そこそこの文章を書くことができるようになるはずだ。
でも、それはゴールじゃなくてスタート地点に立つためなのだ。
自分と同じくらいのレベルの人はゴロゴロいる。
その中でさらに自分の文章を読んでもらうには、と、考えなくてはならない。
自分の文章力に溺れている暇はないと、喝を入れられる。

おわりに
文章を書くということには矛盾したところがある。
自分の文章に酔っていてはいい文章は書けない。
でも、文章の力を信じなかったら文章は書けない。
だからこそ地道なトレーニングが必要なのだ。
レーニングすることで、自分の文章に自惚れないでいつつ、自分の書く力や書いたものが信じられる。

ライターや作家の一番の仕事は、「書く」ことだ。
そういうライターや作家としての態度を教えてくれた本だった。

一冊手元に置いておいて、折にふれて読み返したいと思う。
次は是非取材編も出してほしい。


   



 

 

今年したいこと

・山登り 

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元日に六甲山に登ったらめちゃくちゃ楽しかった。
須磨から宝塚まで六甲山縦走コースがあるので、踏破してみたい。


・『平家物語』を読む
六甲山に行ったときに平敦盛の墓と一の谷古戦場があった。

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忘れていたが、神戸は清盛が福原京を作ったところだ。
さっそく平家物語に興味がわいたので、読んでみたくなった。
平家物語が読めたら琵琶法師の語りとか聞いたり、能の敦盛を見てみたい。
そして、古典にハマれば、能、歌舞伎、文楽、講談と見るものがあり、無限に楽しめることに気付いた。最近ハマるものがなくつまらないなと思っていたので、がんばって読んでみたい。


・あざらしを見に行く 
わたしは動物の中であざらしが結構好きで、去年伊勢シーパラダイスにいったときにあざらしを触ってから、もっといろんな水族館にあざらしを見に行きたいと思うようになった。ところが去年はコロナでできなくなった。
近場でも、須磨とか京都の水族館にはあざらしがいるようなので、今年は行けるところから行ってみたい。


・編み物か服作り 
前から服作りをしたかったがチャンスがないままだった。
今年思いつきで編み物を始めたが、めちゃくちゃ楽しい。
下手くそだが、うちで使うスリッパなど実用品を作っている。
自分のスリッパを作って、今は夫のスリッパに挑戦中。
この調子でいろんなものを作ってみたい。


・通勤時間と退勤後の有効な時間活用
今、もう一つ仕事をしているが、通勤時間と退勤後を寝たり疲れて結構だらけてしまう。今年はもう少し時間を有効活用したい。とりあえず、通勤時は本を読むことにして何かしら持っていってる。退勤後はシェアオフィスでも借りてそこで作業しようかなと考えている。


・何かしら毎月媒体に文章を書く
前までは編集もやりながら文章も書いていますみたいな感じだったけど、今年から自分は書く人ですと言っていくことにした。
存在とか何を書いているかアピールしていきたいので、今年は何かしらの媒体に毎月文章を載せて行きたい。
また、これまで自分は書く仕事では待ちの姿勢であったが、今年からは持ち込みや売り込みをする。
SNSで誰か〜って言っても誰も何も言ってくれるわけではないので、どんどん自分から行くことにする。
好書好日」「QJweb」「仕事文脈」だけなのでここからもっと書ける媒体を増やしたい。


・本を出す
今書いてるカナダ滞在記を出したい。できたら出版社から出したいけど、無理だったら自分で出そうと思う。
これがいちばんでっかい目標。


・褒めてほしいときに褒めてほしいと言う

「太田さんは人より承認欲求がちょっと高い」と友達に言われたことがある。
その友達曰く「それがいい方向に出てるときすごいいい感じ」らしい。
たしかに、それがいい感じに発散できてると、自分もすごい調子がいいと思える。
でもそうじゃないときはすぐ「なんであいつの方が」とか「わたしだってもっとできるのに」ってなる。
わたしは承認欲求丸出しな人って恥ずかしいことだと思ってたけど、自分から言わないとわかってもらえなかったりするので、今年は褒めて欲しい時は褒めて欲しいって自分から言うことにした。
同じように愚痴についても、聞き役に回ってストレスためることが多かったから、愚痴りたいときは、友達にちゃんと「愚痴りたい」っていって、相手してもらうようにしようと思う。


・健康
せっかく去年酒量を減らしたけど、1月にずっとやっていた仕事が終わってから、気がゆるんで守れてない。
楽しく飲んでいるし、飲む量も減ったけど、2月からはまたお酒を飲む量と回数を減らしたい。

思い出したこと追記(1月24日午後追記)
・運転
ペーパードライバーなんだけど、運転できるようになりたい。教習所に行くか、レンタカーを借りて練習するかしたい。

・詩の投稿
一昨年から詩をたまに書くようになった。これまでは書いたらすぐネットに上げていたけど、なるべく書いたものはネットに上げる前に、詩の雑誌に投稿するようにしたい。

2020年の10冊

昔の本や若いころ読んだことのある本をもう一回読むことが多い1年だった。
去年は若いころ理解できなかった文章がわかるようになったり、若い頃よくわかんなかった文章が読めるようになっていたのがうれしかった。

松下竜一『暗闇の思想を』

   
1973年、大分の火力発電所建設を阻止した住民運動のルポ。
松下は火力発電所反対運動のリーダーもしていた。
松下竜一の本は2011年の福島の原発事故のときにちょっと話題になって、その時から読んでみたかった。

被支配者のくせに支配者のようにものを考えていたら、すぐに支配者にそれを利用されるというようなことが書いていて、今は生活感情で反対をしたらすぐ「対案を示せ」と言われるけど、政策を考えるのは政治家の仕事だって言ってたのがよかった。
政治に対していろいろ言うのは、かしこぶらずにやればいいのかとわかって非常に感銘を受けた。

まだ3冊くらいしか読んだことないけど、今ほとんど新刊で手に入る本がなくて残念。

・ジュリー・オオツカ『屋根裏の仏さま』

   


アメリカに移民した日本人移民の女性たちの話。
人称が「わたしたちは」で、無名の女性たちの無数の話が折り重なって、日系人の歴史を描くっていうようなスタイルで、そういう小説いままで読んだことがなかった。
ジュリー・オオツカはいろんな日系人の女性や日本人移民の女性から聞いた話をもとに、史実を調べて書いたそうだ。
ものすごく個人の話に立脚していながら、それなのに匿名性が強くて、壮大なものを描いてるっていうところがすごく面白かった。
ある日系人の一家が戦争中にアメリカで強制収容所に入れられる『あのころ、天皇は神だった』も読むとより深く味わえる。

・陳凱歌『私の紅衛兵時代』

   


『さらば わが愛、覇王別姫』の監督が、文革時代を紅衛兵として過ごした回顧録
異様に格調高くてうまい文章で、これは漢詩のなせる技かと思った。
わたしは農村とかに行かされて農業させられるのも絶対嫌だなと思ったけど、
やっぱ革命ってノリノリで支配者を持ち上げてて、
本人もすごい使命感を持ってて、農村でも目的を見つけそこでなじんで、
それなりに楽しく過ごしていたから、それも含めて革命怖いな〜と思った。

大塚英志の評論『「彼女たち」の連合赤軍』など

   


大学生のときフェミニズムとか言われてもあんまりピンときてなかった。
今読んだらMeTooが話題になったり、社会運動内での女性差別が批判されてるから、
そういうことが連合赤軍でもあったっていうことなのかというのがわかった。
結構先見性のある本だと思う。今読んだ方が面白かった。

 

・緒方正人『チッソは私であった』『常世の舟を漕ぎて』

   


水俣病未認定患者訴訟運動に関わっていたが、訴訟運動から離脱し、独自の道を行った漁師の緒方正人の本。
ずっと手に入らなかった状態だったが、去年河出文庫に入ったので読んでみた。
水俣病のことは何年か前に『みな、やっとの思いで坂を登る』という、患者相談をしている相思社の永野三智の本を読んで、今も続く問題であると知って結構ショックだった。
そのあと、九州の国道3号線をテーマに、その道沿いであったいろんな歴史から九州を見るという森元斎の『国道3号線』を読んだら緒方正人の話が出てきたので、いいタイミングだったので読んでみた。

緒方は被害者の枠から抜け出た人なんだと思うけど、どういう経緯でそうなったのか知りたかった。しかし、緒方の文章はときどき観念的であったり、抽象的であったりして、ところどころ理解が難しかった。
どちらかというと、『チッソは私であった』よりも『常世の舟を漕ぎて』の方が整理されてるし、読みやすかった。
また読むと思う。

石原吉郎

   

シベリアに8年抑留された石原吉郎の詩と文章。
石原の文章は前から好きだったけど、緊急事態宣言のときにまた読んでみた。

www.saudadebooks.com

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石原の文章は自己完結的で異様に迫力があって人を寄せ付けないところがある。
そこがいい。
わたしもこういうのを書きたいと思ってたまに読む。
石原の文章はいつも文章の迫力で読んでしまうんだけど、結局何が言いたいんだろうってなるときもあって、ところどころ意味がわからないところがあったけど、何遍も読んだらだんだんわかってきてうれしかった。

橋本治桃尻娘シリーズ

  


ずっと読みたかったけど、読んだことなかったので読んでみた。
誰の目線で読むかで感想変わりそうだけど、『無花果少年と瓜売小僧』がいちばん面白かった。
若い時に読んだら、男は楽しそうでいいなと思うだろうなと思った。
読みながら、自分は若いときからああいう万年青年みたいな感じの男子に、いいな〜楽しそうでという憧れの気持ちが強くて、どっかで女なんかおもんないなと思っていたことを思い出した。
どうりでシスターフッドとか言われてもよくわかんないはずだと思った。
80年代はまだそういうのあんまりなかったけど、今は女の関係についての本もいっぱい増えてきてよかったなと思った。

・尹雄大『異聞風土記

   

去年読んでよかった本の一つ。レビューも書けてうれしかった。

qjweb.jp


個人史を書きながら広がりがあって、媚びがなくて独立してるけど、誰にも開かれているような文章が理想だ。
『異聞風土記』はそういう感じの本だった。
わたしもこういう感じで文章を書けるようになりたい。

渡辺ペコ『1122』

   

仲良しだけどセックスレスの一子と二矢(おとや)。
一子は二矢に公認不倫を提案、二矢はお花の教室で知り合った美月(既婚)と付き合っているが・・・という話。
女性相談センターの人と話したときに、セックスレス相談は実はすごく多くて、
相談まで来れたらいいけど、その手前で悩んでる人が多いっていう話を聞いたことがある。
だから、こういうテーマが漫画で表現されたことがまず素晴らしい。

1巻から夢中で読んで、グサグサきすぎて出るたびに感想書けなかった。
本当に最後まで読むのが辛かったけど、読めてよかった。
パートナーシップとか、愛とか、セックスとかを全部一人の人だけに求めすぎると、あんまりよくないんじゃないか、ということを読みながら思った。
結婚しててパートナーシップに悩みがある人は是非読んでほしい。

近藤聡乃『A子さんの恋人』

   

最初は軽やかなシティーガールとシティーボーイの恋愛漫画✖️美大あるある✖️谷根千、阿佐ヶ谷、ニューヨークまちあるき漫画みたいな感じで読んでたら、
どんどん内面に入ってったのが面白かった。
ストーリーでおもしろいことが起こってぐいぐい見せるって話もいいけど、
こんなささいな言葉のひっかかりの根元をあれこれたどって、
ラストまで引っ張って大団円みたいな話の作り方できるんだ!って感動した。
若いときの自分のやり残しや思い残しを救うようなラストがすごいよかった。

読みながら、ずっと自分の若い時のいろんなやり残しとか思い残しを
引きずっていることが辛いと思ってたけど、この10年くらいの間にそれは解消されていることに気付いて、それもすごいよかった。

2018年分も見てください。

kokeshiwabuki.hatenablog.com

2020年の振り返り

 毎年ぼんやり10個くらいその年の目標を立てているがあまり振り返りをしていないので、2020年は振り返ってみようと思う。

 

  1. カナダの本を出したい→△
    2015~17年にカナダ年住んだ滞在記を出したい。
    ずっとサウダージ・ブックスのサイトで連載をしており、年明けの頃はそれをまとめたい気持ちがあった。

    www.saudadebooks.com


    そのあとコロナですっかりその気がなくなっていたが、やはり忘れる前になんとかしてまとめたい。しかし、続きを書く気もなくなってしまった。それで、いろいろ考えた結果一回ゼロから書き始めることにした。
    出版はできなかったが、一応手をつけられたので△。
    なんとか書き上げて、何らかの形で出版したい。興味ある人は是非声をかけてください。

    editota.com



  2. 酒をやめる→△
    急に酒をやめようと思いついた。

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    このように、半年くらいは順調に行っていたが、
    9月以降、仕事のストレスが半端なくて、
    数回禁止していた家飲み、外で一人飲みをしてしまったので△にした。
    それでも月4回は超えなかったのでよしとしたい。
    今年はまた基本月1はオッケーくらいのルールで運用したい。

  3. TOEICを受けて○○点以上取る→△
    最初、最低これくらいは取りたいという点数はクリアできた。
    しかし、コロナのせいでTOEICが中止、再開後は抽選制になってしまった。
    学生でガチで成績や試験がかかっている人もいるかもと思うと、
    趣味で受けるような人間が席数を取ってしまっていいのか、という気分になって受ける気がなくなってしまった。
    一応変わりになるものは見つけたがなかなか継続できていない。
    新しい目標を考えたい。

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  4. 好書好日で4本以上書く→◎

    editota.com


    結局6本書いた。
    まずまず反応もよかった。
    仕事に関係ある目標が一つでも達成できたのがよかった。

  5. 寝る前に携帯の電源を切る→△
    寝る前にずっと携帯を見るのと、起きてすぐ見るのをやめたかった。
    仕事がつまってないときはできるのだが、仕事がつまってくるとできなくなる。
    今年はそういうのに乱されず平均してできるようになりたい。

  6. ものをなくさない→○
    去年のお正月は最悪で、年明けに結構な金額のお金と、めちゃくちゃ気に入っていた帽子を落とした。でも、厄落としだと思ってこれからなくさないようにしようと思って、目標に入れておいた。
    これは多分できたと思うけど、今年だけじゃなくて毎年できるようにしたい

  7. 春に韓国に行く→✖️
    本当は2019年の春に『愛と家事』の韓国版が出たからその時に行くつもりだったけど、仕事が忙しすぎていけなかった。
    去年の春、行きたかったけどコロナで無理になった。
    ほんとに2019年に行かなかったことをめちゃくちゃ後悔している。

  8. 無理な仕事やよくわからないイベントや飲み会の誘いを遠慮せず断る→ー
    そもそもコロナでイベントや飲み会自体がなくなった。
    あと、わたしがめちゃくちゃコロナを怖がっていた時期があって、
    『密鬱日記』という日記を書いていたら、そもそも誘いが来なくなった。
    でも、最近プライベートと仕事がごっちゃになってたから、ちょうどよかった。
    仕事は仕事、友達は友達と別にして、社交はほどほどにして、
    大切な時間は友達や家族と過ごしたい。

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  9. 文学フリマに出る→△
    1月の京都のは出られた。9月の大阪は申し込んでいたけど、コロナの状況を考えて出るのをやめた。一緒に出ていた友達も遠方住まいや福祉施設に勤めており、わたしも大阪に通勤していて、お互いリスクが高いのでやめようということになった。
    これを悪く捉えず、いい機会だと思って、一旦文学フリマに出るのはやめて、もうちょっと他の方法を考えようかなって思ってるところ。

  10. 愚痴をネットに書かない→✖️
    これは無理だった。
    感情のはけぐちみたいに文章を書かないようにしたい。自分はそういう芸風じゃないし、ちゃんと自分の中のレベルをクリアしたものだけ載せるるようにしたい。これも、6と一緒で毎年できるようにしたい。

huluでハマった海外ドラマ

読書日記だけど番外編。
2020年はうちにいる時間が多くて、動画配信サービスを利用する人が多かったと聞きます。
巷ではネ○トフリックスの作品が話題のようですが、わたしはhulu派。
あまり話題になりませんが、huluで見て面白かった作品を紹介します。

・「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語
マーガレット・アトウッド侍女の物語』のドラマ版。
もともとこれが見たくてhuluに入ったくらい。
主演はエリザベス・モス。
環境破壊のせいで女性たちが次々不妊になり、出生率が減っていく、
そんななか出産経験のある女たちは司令官たちのうちに派遣され、
彼らの子を産む「侍女」とされて、というめちゃくちゃ恐ろしいストーリーです。
聞いただけで身の毛もよだつ話ですが、映像で見るとよけいえぐい・・・。
ドラマ版は少しアレンジが加えられているみたい。
小説版の方は最近続編の『請願』が出て、こちらも一緒に是非読みたい。www.hulu.jp

・トップ・オブ・ザ・レイク
『ハンドメイズ・テイル』のエリザベス・モス主演。
性虐待専門の刑事ロビンが、12歳の少女の自殺を巡って捜査するうちに、
少女一家の恐ろしい秘密がわかってというようなストーリー。
第二シーズンはオーストラリアの風俗業に出稼ぎに来ているアジア人女性の一人が殺されてって話。
全体的に女性蔑視がはびこる警察組織がこれでもかと描かれていたり、
女性たちをとりまく環境の過酷さが描かれている。
DV、植民地支配、性産業、虐待などが裏テーマになっていて、フェミニズム的な視点がすごくある。
オーストラリアの自然の景色が美しく、ストーリーも重いが面白い。

www.hulu.jp



・レクティファイ
17歳のとき同級生をレイプして殺した罪で死刑囚となったダニエル。
しかし、妹の尽力で無罪が証明されて釈放され・・・。
ところが、収監されていた19年という歳月は
街の人が彼を受け入れるにはあまりにも長く、
ダニエル自身も刑務所であった性被害のトラウマによって、
なかなか普通の生活を受け入れるのが難しかった。

去年見ていちばんおもしろかった。
シーズン4まであって、加害者家族となったダニエル一家の再生も丁寧に描かれており、映像も美しい。
ただ一部、隣の独房にいた黒人の受刑者の描き方や、ダニエルに救いの手を差し伸べる女性たちがいいタイミングで登場するところなどは、少しステレオタイプのように感じた。
それでも人間がやり直すこととは何かや、傷から立ち直ることはどういうことかが深く描かれており、よい作品だと思った。

www.hulu.jp
・The Path
huluオリジナルの作品。
今はhuluプレミアムに入らないと見られないようですが、2019年に見て面白かったものの一つ。
新興宗教団体マイヤリスト・ムーブメント(作中では、カルトと呼ばれたり、自分たちでは宗教と言わずに運動だと言っていました)の2世のエディが主人公。
エディのライバルで、エディの妻のサラを思い続けるカル、
同級生と恋に落ちたけど同級生はマイヤリストに懐疑的で信仰をとるか恋愛をとるかで悩むエディの息子など、宗教と人生がテーマ。
マイヤリスト・ムーブメントはマイヤー博士が書いた本が原典として崇められていて、
コミュニティーの中で自給自足で生活して、
自然と一体になることを教義としている。
マイヤリスト・ムーブメントの内容の、人生に一回伝道の旅に出るとか、
フォークソングを基調とした教団の歌があるとか、
既存の宗教のいろんな要素をミックスした感じ。
ラストの方はマイヤー博士の暗部に迫り、カルが自身のトラウマと向き合うなど、人間の精神ドラマとして宗教を取り上げている感じだった。
宗教を信じるとか宗教が身近にある生活がどういうものかかいま見れて面白かった。

yuya-t.com
・HOMELAND
CIAのエージェント、キャリーを中心にしたアメリカのスパイドラマで、結構現実が反映されている。
アルカイーダの捕虜になって帰ってきた海兵隊の軍曹ブロディが、
アルカイーダのスパイになっているのではというところから話が始まる。
そこから、タリバーン、大統領選挙をめぐるロシアのSNS攻撃、と現実を反映した話が続く。
話にどんでん返しが多く、さらにどんどんキャラクターが入れ替わり、
その中でPTSDやキャリーの持病である双極性障害が描かれるなど深みもあって、
とにかく目が離せなかった。
第8シーズンで終了なのが残念。

www.hulu.jp
・コール・ザ・ミッドワイフ
これも2020年にハマった作品の一つ。
もともとBBCで放映されていたイギリスのドラマ。
ジェニファー・ワースの『来て!助産婦さん』が原作。
イギリスの国営医療制度が整い始めたイギリスの1950年代のロンドンのイースト・エンドで、貧しい人たちのために医療を提供するノンナートゥス・ハウスの助産婦と、助産婦資格をもつ修道女たちの奮闘を描く。
キャラは結構入れ替わりはあるんだけど、ノンナートゥス・ハウス自体が舞台なので、
そこはあまり気にならない。
また、出てくる女性たちが多様なのもいい。
助産婦さんのドラマなので、毎回いろんな妊婦さんが登場する。
中には結婚せず妊娠したりレイプや売春によって妊娠したり、配偶者以外の人によって妊娠したりといったこともある。
一方、修道女たちは信仰に生きており、結婚や出産と無縁に生きている。
そこが妊娠や出産を扱ったドラマでありながら、女性にとっての人生は妊娠や出産だけが全てではないと述べているようで、女性の生き方の多様さを描いているように見れ、フェミニズムドラマとしても見ることができてとても面白い。

www.hulu.jp


huluでみられるドラマは堅実な良作が多いという印象。
是非興味を持った人は見てみてください。

  

 

 

成熟とは何か 『ゲンロン戦記』東浩紀

東浩紀さんの『ゲンロン戦記』を読みました。

   

 

この本は、批評家で作家の東浩紀さんが2010年に立ち上げた
「株式会社ゲンロン」についての歩みを振り返った本です。
ノンフィクションライターの石戸論さんの聞き書きによるもので、
日常の言葉遣いで書かれており、
構成もすっきりとしていたのでとても読みやすかったです。

この本の読みどころは2つあります。

1つがビジネス本としての面白さです。
批評家として活躍していた東さんが新しい時代を作るメディアを作ろうと、
株式会社ゲンロンを立ち上げ、出版事業でヒットを飛ばし、
ツアー事業で話題を呼んで、さらにはカフェも始めて、
当時まだ革新的だった動画配信事業にも乗り出しと、
どんどん組織が大きくなっていきます。

一見順調に行きかけたと思うたびに、お金の使い込みがあったり、
信頼していた人に裏切られたり難局にぶつかります。
しかし、そのたびに協力してくれる人が登場して、危機を回避していきます。
その様はハラハラとして、まるでリアルな少年漫画をみているみたいでした。

一方で、この本はそんなビジネスの派手な部分ばかりを描くだけではありません。
東さんが「会社の本体はむしろ事務にある」(p32)と言っているように、
会社経営の地味な部分にも光を当てています。
難局にぶつかるたびに、いかに事務や人事や総務を人任せにしていたかという反省にページが割かれており、数字を手(エクセルへの打ち込み作業)と紙(領収書)で把握することがいかに大事か、ということが力説されています。
今までそんなところに目をむけたビジネス本があったでしょうか。
たいていのビジネス本というのは、アイデアや夢にあふれた経営者が、
右腕となる人と出会って、その人が苦手なところをやってくれました、みたいな感じで事務や総務については紙幅が割かれないことが多かったのではないでしょうか。
しかし、この本ではそういう事務の大切さを描いているところがとてもよかったです。

というのも、事務は会社ではケア要員的なポジションで、
光が当たるのは製造部門とか企画部門が多いです。
しかも事務部門というのは、やって当たり前で感謝されないし、褒められもしません。私は若い頃はそうした風潮や、事務部門の多くに女性が占めていることにモヤモヤを抱えていました。
事務が会社を支えていると正面きってそういうことを言ってくれる人は少ないです。
だから、この本を読んでそこを見てくれている人がいるのだと、感謝したいような気持ちになりました。

もう1つの読みどころは、東さんの成熟の物語という点です。
大雑把な理解ですが、日本の批評の多くは「成熟とは何か」をテーマにしています。
そしてその多くが、「男性」の「母からの自立」にフォーカスしています。
そこでは、女性の成熟は「子供を産むこと」と一旦かっこでくくられて、「男はどうやったら成熟できるのか」を人が書いた文学作品を対象に議論しています。
そして、当の批評家自身の成熟については特に述べず、批評家自身はどこか高みから他者の成熟度合いを云々しているような印象を持っていました。
ところがこの本では他者の「成熟」についていろいろ言っていた「批評家」が、自身の成熟について包み隠さず述べています。
そこに感動しました。

この本の5章で東さんは、
自身の会社経営の失敗の原因を自分が未熟だったからと述べています。
本当は本で読んだ方が感動するのですが、すこしかいつまんで紹介しますと、
東さんは、最初は自分と同じような仲間=「ぼくみたいなやつ」を探すために、会社を作ったそうですが、そのノリでやろうとすると、必ず軋轢を生んで失敗しまいました。
そして、とうとう、自分みたいなやつと一緒にやるのを諦め、自分の「孤独」を引き受けることでしか、ゲンロンを続けられないと悟ります。

なぜここに感動を覚えるかというと「日本人は未熟だ」、「最近の人は子供っぽくなった」「成熟すべきだ」というようなことを言う社会評論は多いのですが、その解決策として、家族を作ること、子供を産み育てることを提示する場合が多いからです。
しかし、それは今の時代には合わないと思います。
もしその形しか成熟の姿がないのであれば、とても息苦しいし、そのことで抱かなくていい罪悪感や疎外感を抱く人は多くいるでしょう。
しかしここで東さんは「他者と出会い、孤独を受け入れること」もまた成熟の一つの形であるということを身をもって示しています。
成熟の過程を親になることや家族を得るということから切り離し、「他者と出会う過程」として描いたことで、さまざまな可能性が広がります。
それを身をもって示していることに感動を覚えました。

最後に、この本が成熟をテーマとしていることと、ゲンロンの目的が知の観客を育てることにあるという部分は通底しているのではないかと思いました。
「観客になる」というのは、何かになりたいという夢を持ってそれを目指すとか、
いつまでも成長を目的とし夢を追いかけるのがいいことだ、
というのとは対極だからです。
自分の限界を知る、作り手になることを諦めて観客の側に回るというのも、
立派な文化を支える態度であると示しています。
わたしはこれまでどこか観客になることを、負けみたいに思っていましたが、この本を読んでそうではないのだと気付きました。
ダサいのは、観客になることをダサいと思うことや、
そのことで自虐したりルサンチマンに陥ったりすることです。
観客は観客の矜恃をもって、批判的に作品を見て文化に参加すればいいというのは、
すごく成熟した態度だなと思いました。

また、ゲンロンは亜インテリ(丸山真男の言葉、地方の名士や小中学校教員や公務員といった人たち、東さんは問題含みの分類だが、と断ってこの言葉を使っています。)にリーチしているということについても、同様に思いました。
都市部で大卒以上でインテリっぽい仕事につけるなんて、日本社会では少数派で、むしろ日本社会はそういうは「亜インテリ」層に支えられている。
そして、そこにアプローチできないとただの都市部のインテリの内輪の知的遊戯に終わるというような批判精神を感じました。

わたしは今38歳で東さんがゲンロンを立ち上げた年齢と同じ年なのですが、
ここ数年若いときの気持ちでやっていけないことに辛さを感じていました。
それはうっすら自分は成熟しないといけないというサインであることに気づいていました。
しかし、その方法がわからず手詰まりという感じをもっていました。
そんなときに『ゲンロン戦記』を読んで、自分のステージの変化をはっきりと自覚できました。
その変化は、嫌だったり気付きたくなくても、東さんが受け入れたように受け入れないといけないものなんだ、ということもよくわかりました。
そして、そうすることが成熟の一歩であることも。

東さんがゲンロンとともに成熟してきたように、
わたしも自分の持ち場でこれから10年がんばってみようと思えた本でした。


名前のない関係 『スーベニア』しまおまほ

しまおまほさん『スーベニア』を読みました。

 

  

しまおまほさんというと、祖父母は島尾敏雄島尾ミホ
両親は写真家の潮田登久子島尾伸三というクリエイター一家。
高校生の頃『女子高生ゴリ子』や『しまおまほのひとりオリーブ調査隊』
とか大好きでした!

だけど小説を読むのは初めて。
物語はカメラマンのシオが、好きだけど定期的に会ったり
連絡先を交換したりといったような恋人関係ではない文雄との関係を続けるものの、
東日本大震災があって連絡が取れないことに不安になるうち、
違う男性とも付き合うようになってというような話。

林芙美子原作・成瀬巳喜男監督の『浮雲』って映画があるんだけど、
腐れ縁で続く男女の物語で、これも結局二人の関係は最後まで名前のない関係のまま。現代版『浮雲』って印象だった。

会話でテンポよく話が進むので、すごく読みやすい!
くすっと笑えるシーン、あるあるっていうシーンがあって、
文章はシンプルなのに、ディテールが細かくてわざとらしくないから、
すごくリアリティーがあった。

最後シオが選ぶ道が、ありきたりな家族に収まらない形で、
シオは自分の気持ちに正直に生きるうちに、流れるがままそういうところに行き着いたのが興味深かった。
シオがぜんぜん肩ひじはってる感じじゃないけど
現状の家族制度にあてはまらない家族の形で生きることに決めたの応援したくなった。