こけし日記

読むことと書くことについて

メディア掲載実績

2019年
平野愛さんと大阪の肥後橋にあるCalo Bookshop & Cafeに行きました。

(「好書好日」2019年06月07日配信)

book.asahi.com


2018年

・『読売新聞』2月7日

サンヤツ広告に『愛と家事』掲載されました。

・『山口新聞』3月7日

暮らしの広場で、『愛と家事』が「家族の形に正解はない」と紹介されました。

・『北海道新聞』(夕刊)3月24日
「エンタメ本棚」で『愛と家事』が紹介されました。評者はなタ書房の藤井キキさんでした。

・『リビング京都』2018年4月28日号
「コレ読んで!」で『愛と家事』が紹介されました。選者はマヤルカ古書店のなかむらあきこさんでした。

愛と家事|コレ読んで!|リビング京都


・『サンデー毎日』2018年4月29日号でインタビューを受けました。
 聞き手は南陀楼綾繁さんでした。

mainichi.jp

・みんなの暮らし日記ONLINEというサイトで『愛と家事』が紹介されました。

minna-no-kurashi.jp


・梅田蔦屋書店にて2018年5月に開催された「She is #生活をつくる」で、
『夫のちんぽが入らない』『ここはおしまいの地』の著者のこだまさんが
『愛と家事』を推薦してくださいました。

 

yagakusha.hatenablog.com


・『朝日新聞』「彼女の10年」で取材してもらいました。
登録すれば無料で読めます。

www.asahi.com


・「働く女性に寄り添う17冊」で
Title店主の辻山良雄さんが『愛と家事』を紹介してくださいました。

style.nikkei.com


ネットラジオ
・オムライスラヂオ No.297  12/ 28配信 『本を贈る』について
『本を贈る』について - オムライスラヂオオムライスラヂオ

出演:青木真兵×青木海青子×中岡祐介(三輪舎)×太田明日香


・オムライスラヂオ No.273  7/18配信 「あたらしい家族の形」について

【オムラヂとほん vol.2】「あたらしい家族の形」について - オムライスラヂオオムライスラヂオ

出演:青木真兵×太田明日香


・京都の放送局FM GIG「もっとシャイニーズ」 8/7 配信

出演 安田いづみ×貞島真理子×太田明日香


〜2016年
NTTが運営するドリームアークというサイトで、『福祉施設発!こんなにかわいい雑貨本』を紹介してもらいました。


greensで『福祉施設発!こんなにかわいい雑貨本』を紹介してもらいました。
(2013年4月3日配信)
greenz.jp




民俗学者・畑中章宏さんが『天気の子』を読み解く記事を書きました

いつも書いている『朝日新聞』読書サイト「好書好日」で、
民俗学者・畑中章宏さん(@akirevolution)が
『天気の子』を読み解く記事を書きました。

    


帆高はどうして海から来たの?
新海誠監督の故郷・長野に伝わるある神話がインスピレーションの元では?
そして、肝心の「晴れ女」陽菜は何者か?

物語にある謎を、こんなふうに読み解けるんだ、と目からうろこが連続のインタビューでした。

book.asahi.com


なんと、好書好日でプレビュー一位を獲得!

f:id:kokeshiwabuki:20190822110447p:plain


やったーーー!!!

畑中さんのインタビューは、はまるで探偵の謎解きを聞いているような
スリリングでワクワクした時間。
もっといろんな人に聞いていただきたいな、と思っていたところ、朗報が。

8月29日(木)19時半~
ロフトプラスワンWEST(大阪ミナミ)でトークイベントがあるそうです。

https://loft-prj.co.jp/schedule/west/124661

ご一緒に登壇するのは、『日本のヤバい女の子』のはらだ有彩さん(@hurry1116
日本の昔話を題材に、彼女たちが今生きていたらどんなだろう、
という姿を生き生きと描いています。

こちらは以前インタビューした記事。

book.asahi.com


はらださんもすごく素敵な方。
こんなおもしろい二人のトークが生で聞けるなんて、シ・ア・ワ・セ〜。
イベントに行くのが今からとても楽しみです。

 

ライティング講座を開催しました(@神戸 Wacca 2019/7/27)

新長田にあるシングルマザーの就業支援や子どもの学習支援をしているWaccaさんでライティング講座をしました。

新長田ってどこ?と思うかもしれませんが、
阪神大震災で大きな被害を受けた地域で、今は鉄人28号像で有名です。

f:id:kokeshiwabuki:20190727091408j:plain

台風の日で、空模様は悪かった

講座は、表現することで、自分と向き合うという内容です。
参加者の希望があればZINEを作ろうということで、
お試しでまずは第一回をやることになりました。

f:id:kokeshiwabuki:20190801074840j:plain


最初の1時間くらいはわたしが『愛と家事』を作ったときの話をしました。

印象的だったのは、
どうして『愛と家事』を書いたんですか?」と聞かれて、
「なぜ自分が離婚することになったのか納得したくてこの本を書いた。
既存のカウンセリングや、いろんな本を読んでも納得できない部分があったので、
自分なりの理屈をつけたかった
と答えたところ、司会の高橋綾さんに
「太田さんのやったことは当事者研究ですね!」
と言われたこと。

当事者研究というのは、北海道のべてるの家で生まれた
当事者がかかえる固有のいきづらさがどうやったらましになるかを、
自分なりに解決方法を探る」というアプローチだそうです。
わたしの本はすごく染みる人と拒絶する人がいて、この差がなんなんだろうと思っていたけど、当事者研究と言われたら納得しました。
わたしみたいなアプローチが効く人もいれば、全く効かない人もいると思います。
万人受けする本じゃないというのがわかってよかったです。


f:id:kokeshiwabuki:20190727095524j:plain

参考に持って行ったZINEいろいろ(女性が作ったものをセレクト)

そのあと「もしあなたの人生が本だったら?」という、ワークをしました。
これはわたしが考案したもので、
自分の本を作るならどんな目次やタイトルにするかというワークです。
このワークは久しぶりに自分と向き合う時間になったと好評でした。
みなさん目次を作ることで書きたい意欲が刺激されたようで、
是非2回目もということで、これから参加者のみなさんとZINE作りがスタートしそうです。

こちらはもうすでに参加は締切っています。
こういう講座を開催してみたい方は、お気軽に問い合わせ先からご相談ください。


企画・編集した本 『よい移民』ニケシュ・シュクラ編・栢木清吾訳(創元社)

7月末に創元社から『よい移民』という本が出ました。

    


イギリスの移民の子どもたちである、黒人やアジア系、東アジア系のクリエイター21人による、自分たちの体験を綴ったエッセイ集です。
翻訳者は神戸大の栢木清吾さん。装丁は加藤賢一さんです。

2016年にイギリスでベストセラーになって8万部も売れた本。
どうして話題になったかというと、クラウドファンディング
出版のための資金集めがされたのですが、あの『ハリーポッター』シリーズの
J・K・ローリングが、支援を表明したからなんです。

この本を作ったのは、南アジアにルーツを持つ作家のニケシュ・シュクラ。
日本で翻訳は出ていませんが、小説や、ヤングアダルト小説、映画の脚本、ラッパーと多彩な才能を持ち、『Time』の「次世代のアーティティストをつくる12人のリーダー」にも選ばれた一人で、期待の星です。
イギリスで、黒人やアジア系の人たちによる本が少ないと思っていたシュクラが、
「自分たちの物語を語る場がほしい」と思い立って作ったそうです。

日本でも4月に入管法が改正されたことをきっかけに、
「移民」と名のつく本がたくさん作られています。
「是非」を論じる前に、もうすでにこの日本で人生を過ごしている人たちがいます。
これからもその流れをとどめることは難しいと思います。
そして、一旦来て、この地で生活を作った人たちや、作り始めている人たちを、
簡単に「国へ帰れ」ということは難しいと思います。


家族を伴って来た人、日本で家族を作った人たちの子どもたちにとっては
すでに日本は故国です。
でも今の日本は十分に彼らに自分たちが、受け入れられている、
と思える場所でしょうか。

わたしは2015年から2年間カナダに住みました。
そのときに初めて自分が外国人という立場になって、
外国で生活することの大変さを感じました。
永住したり、そこで家族を作るなら、もっと大変なことがあると思います。
そして日本に帰ってきたら逆に、「外国人を受け入れる」とか、
「共生する」ことがどういうことかを考えるようになりました。
人の立場になるということは難しいですが、『よい移民』に描かれた体験が、
それらのことを考える手がかりになればうれしいです。

 

今まで開催した出版イベント

・2019年08月12日(月) 16:00~17:30 @ジュンク堂難波店
『よい移民ー現代イギリスを生きる21人の物語』(創元社)刊行記念トーク

トークイベントレポをライターのヒトミ・クバーナさんが書いてくださいました。
レポートはこちら

www.hitomicubana.com


・2019年8月17日(土) 18:00〜 @本屋プラグ(和歌山)
「届けられるべき声のはなし 『よい移民』刊行記念トークショー 栢木清吾×ケイン樹里安」

ケインさんはハーフの当事者メデイア「HAFU TALK」を運営し、ハーフ研究やよさこいの研究で頭角を表している若手社会学者です。
またまたトークイベントレポをライターのヒトミ・クバーナさんが書いてくださいました

note.com


・2019年8月31日(土) 19:00〜 @Readin'Writin’(東京)
「いつまで「移民」なのか?」
栢木清吾さん(『よい移民』(創元社)訳者)×小笠原博毅さん(『真実を語れ、そのまったき複雑性において』(新泉社)の著者)
 
・2019年9月21日(土)19:00~(開場18:30)@古本屋ワールドエンズ・ガーデン(神戸)
「『よい移民』刊行記念トークイベント「移民」についてわたしたちが語るときに語るべきこと」

note.com

イベントまとめ記事はこちら

kokeshiwabuki.hatenablog.com


・2019年9月28日(土)15時〜 @本のあるところajiro(福岡)

本書訳者で、「人種」と移民をめぐる社会的・文化的問題がご専門の栢木さんをお招きして、英国および日本における移民を取り巻く社会問題についてお話いただきます。
イベントまとめ記事はこちら

kokeshiwabuki.hatenablog.com

・2019年10月18日(金)19:00〜21:00(開場18:45)@CAVABooks(出町座フリースペース)
「『よい移民:現代イギリスを生きる21人の物語』(創元社)刊行記念イベント ~移民社会イギリスの経験から何を学ぶべきか?~」

・2019年12月14日(金)@汽水空港(鳥取
「差別のカジュアルさにふれる」
ケイン樹里安さん、上原健太郎さん編『ふれる社会学』とのコラボ企画。
ケインさんがnoteにイベントの様子を書いてあります。

note.com


(今後の予定)
・2020年1月26日(日)@石引パブリック(金沢)
「移民社会と向き合うために ーイギリス文化研究者2人の対話ー」
訳者の栢木清吾さんと金沢美術工芸大学の稲垣健志さんがお話しされます。

www.ishipub.com


(メディア掲載情報)
・2019年9月14日『日経新聞』掲載
・2019年9月22日『信濃毎日新聞』掲載
評者はノンフィクションライターの川内有緒さん
  ※こちらは共同通信配信の記事で29日までに、『沖縄タイムズ』『福井新聞』『中国新聞』『京都新聞』『神戸新聞』等でも掲載されました。今後も地方紙で掲載される予定です。
・『pen』11/15号で紹介
・『文藝』冬季号に『よい移民』の書評掲載
 評者は綿野恵太さん
・『週刊エコノミスト』10月11日号でブレイディみかこさんによる読書日記に『よい移民』が登場しました。

weekly-economist.mainichi.jp


・『週刊ポスト』12月27日号で与那原恵さんの書評掲載

www.news-postseven.com

 

写真家の平野愛さんと、Calo Bookshop & Cafeに行きました

いつも書いている『朝日新聞』の読書サイト「好書好日」で、平野愛さんと大阪の肥後橋にあるCalo Bookshop & Cafeに行きました。
この機会にプロフィール写真も撮っていただきました。

book.asahi.com

平野さんは、いろんな人と本屋さんに行く「私を本屋に連れてって」という連載をしていて、その一貫です。

前回の岸本千佳さんと和歌山のプラグさんに行った回も必見ですよ。

book.asahi.com


平野さんは「好書好日」で初めてご一緒させていただきましたが、自然体の魅力を引き出す写真がとても素敵です。

ふだんはとても優しくておもしろい方なんですが、写真では今時珍しくフィルムで撮っておられて、一瞬のシャッターチャンスを狙う姿がキリッとしていてとてもカッコいいです。
よかったらほかの写真も合わせてごらんください。

小説家の大西智子さん

book.asahi.com

テキストレーターのはらだ有彩さん

book.asahi.com


小説家の藤野可織さんとアーティストの谷澤紗和子さん

book.asahi.com



山崎ナオコーラさん『趣味で腹いっぱい』感想

『趣味で腹いっぱい』を読みました。

    


『趣味で腹いっぱい』の内容
会話を中心に話が進むのでとても読みやすかったです。
主人公の鞠子は「女性活躍」のご時世に、「主婦になりたい」と堂々と言って、趣味に邁進しています。一方の夫の小太郎は、高卒の銀行員で、「働かざるもの、食うべからず」がモットーの父親のもと、働くことが当たり前の環境で育ちます。鞠子のやっている趣味は世間の役にも、鞠子のキャリアにも役に立たないことばかりですが、小太郎は鞠子と結婚したことで、生活に大きな変化が訪れます。

鞠子は働いていないことに対して申し訳なさを感じておらず、また趣味に邁進しているとはいっても、その趣味で身を立てようとか有名になろうとか向上しようといった意志があるわけでもなく、純粋に楽しんでいるだけです。その態度がとても新鮮でした。

趣味に対する思い込み
どうも、趣味は立派なものでないとという思い込みがあります。
趣味なんだから気楽にやればいいのに、例えば読書なら、たくさん読んでないととか、古典を読んでないととか、趣味のいい本を読まないとみたいなプレッシャーはありませんか?
本来は趣味なんて、仕事にはならないとかしたくないけど好きなこととか続けていること、ちょっとした楽しみで生活を潤してくれるものなのに、そこに優劣をつけたり、仕事に役立てなければという思い込みがあるような気がします。

わたしは自分では映画鑑賞が趣味だと思っていますが、人には言いにくいです。なぜなら、月一本も見てないし監督にも俳優にも詳しくないし、話題作もそんなに見てないからです。
それからもう一つ、人にはあまり言いませんが、語学学習も趣味です。
今は英語をやっていますが、TOEICの点数はそんなにいいわけではありませんし、会話もへたくそです。でも、海外ドラマを見ているときに単語が聞き取れたり、こういうときにこの単語の使うんや!という地味な発見が楽しいです。

※ちなみに、以前趣味として語学学習を捉えられないかという内容のブログを書いたことがあります。


映画も語学も一時は極めたいなんてことを思った時期もあったのですが、そうすると続けるのが嫌になりました。
でも、趣味なんだから好きにやればいいやと割り切ったら、楽しくなりました。

趣味と仕事
結構最近のビジネス書を読むと、趣味を活かして仕事に、という話が多いです。例えば食べ歩きが好きならブログを書いてアフィリエイトで儲けようとか、手芸が好きなら手作り品のネットショップで売ろうとか。

そういう本を読むと、趣味は役立てないといけないのかな〜と思っていたのですが、この本を読むと、趣味は趣味でいいんだ!と肯定されたような気がして、頼もしかったです。

正直、わたしの仕事は趣味みたいなものだと言われることがあります。また、結婚しているから趣味みたいな仕事でいいねみたいなことを、はっきりとではありませんが、言われることもあります。
それまではそういう言い方にちょっと嫌な気持ちを抱きつつ、自分だけ楽していると責められているような気持ちになることがありました。
でも、この本を読んで、趣味みたいな仕事でかせいで何が悪い、と自信をもらいました。あんまりそういうことでうじうじしなくていいと言ってもらったような気持ちになりました。

この本のいいところ
わたしはまだ鞠子さんほど割り切れていませんが、働けないことに罪悪感を感じたり、趣味を極めたり役立てられないと引け目に感じることはないんだなと勇気が出ました。
そして何よりこのタイトルが素晴らしい!
『趣味ではらいっぱい』。
「趣味で腹いっぱいにはならない」という風潮や、「働かざるもの、食うべからず」という世間の常識言葉を皮肉っていて、すごく不穏でいいと思いました。
わたしも家族や世間に無駄に肩身の狭い思いを抱かずに、鞠子さんのような気持ちでこれからもやっていきたいです。

 

   

千野帽子さん『物語は人生を救うのか』感想

千野帽子さんの『物語は人生を救うのか』を読みました。

   



前半は物語は何かとか、どういうものが物語とみなされるかとか、フィクションとノンフィクションの違いといったような理論で、後半(とくに最終章が)著者の千野帽子さんの体験談に基づく話です。
例や引用が豊富でわかりやすく書かれていますが、厖大な参考文献をもとに書かれているのと、文学理論は専門外なのでなかなかすぐに理解したとは言いがたいです。要約すると、以下のようなことが書いてある本でした。

内容について
自分の身に何が起こったか理解するときに、既存の被害/加害の枠組みを使うのは有効だけど、そこからの回復を考えた場合に、いつまでもそこにこだわっていると被害者意識に飲み込まれるという危険がある。
特に、被害者であるということと、被害者意識を持つ事とは違ういうことが述べられており、その部分が印象に残りました。
わたしは読んでいて石原吉郎という詩人のことを思い出しました。
千野さんも参考にされているそうです。

石原吉郎の考え
石原は第二次大戦後シベリアに抑留された人です。
彼が書いた「ペシミストの勇気について」という文章があります。極限状態で自分を保つには自分の加害性を自覚して、告発の姿勢から距離を置くことだみたいな内容でした。
石原の言うのは、自分を被害者として規定すると、それ以外の枠で自分を見れなくなって、苦しくなる。
被害者となったり、告発することから自由になりたいなら、告発という姿勢から距離を取る。そのためにはまず、自分も加害者になる可能性があると自覚するのが大事だ、というようなことが書いていました。
石原の文章は難解なのですが、千野さんは『夜と霧』も一緒に読むといいとおっしゃっていました。

わたしの体験
わたしは元夫にたたかれたのがきっかけで離婚しました。
でもそれを最初DVだと思っていませんでした。だから、わたしは自分のことを被害者だと思っていませんでした。
でも、DVやモラハラのことを知って、一回きりの暴力ではないこと、暴力だけがDVではないこと、それがエスカレートする可能性があることを知りました。
わたしは、暴力をふるわれる前も元夫と一緒にいるのが苦痛でした。しかし、それまで離婚はよくないとか、がまんすればいつか元夫が変わるはずだという気持ちがありました。
元夫のしたことはDVであり、その関係は離れないと解消できないと理解したことで、離婚してもいいと思えるようになりました。自分を被害者とすることで、自分の置かれた状況を理解し、離婚する決意をもつことができました。

ところが、離婚後、言いようのない怒りにとらわれることが増えました。時々その怒りが転化して、他人に何かをされたときに爆発するということが何度かありました。それが辛かったです。
また、その後再婚し、その生活は平穏そのもので何の不満もありませんでした。それなのに、時々どうして20代のいちばんいい時期をあんなしょうもない人との付き合いに浪費してしまったんだろう、人生を無駄にしたという気持ちが拭えず、無気力になることがありました。
長い間どうしても元夫に謝ってほしい、元夫を悔しがらせ、見返したいという気持ちにとらわれていました。またその気持ちをもっているとせっかく新しい人生が始まったのに、その生活を楽しめなくて辛かったです。

この本を読んで、あの怒りや無気力、苦しさは、被害者意識だったんだなと気づきました。また、今が幸せでも被害者意識にとらわれていると、幸せを意識することができないと実感しました。被害にあっても新しい人生を始めることができるし、その新しい人生では自分は被害者じゃないんだと思いました。

この本のいいところ
わたしはそういう自分を変えたくて、スピリチュアルとか自己啓発みたいな本を読んでみたこともあったのですが、全然ぴんときませんでした。また、そういう本には往々にして感謝とか許しとか苦しい体験が人を成長させてくれると書いてあるのですが、そう思えない自分が狭量な人間だと思うことも辛かったです。

また、心理学の本も読んだりしました。だいたい子どもの頃の話に落し込まれます。でも、そんななんでも幼少期の体験が影響するだろうか、という疑問には答えてくれなくて、ぴんときませんでした。

千野さんは「許し」という言葉を使わないし、トラウマとか時間が解決とか忘れろとも言わないし、被害者側が狭量だといった非難もせずに、論理的に人の心や脳はこういう構造になっていますよ、と論理的に説明をしていたので、ものすごくしっくりきました。
めちゃくちゃいい本です。

被害者意識にとらわれるなというメッセージの意味するもの
被害者意識にとらわれるなというメッセージは、ともすれば自分の心次第で現実の受け止め方は変わるのだから、自分の心がけ次第だと捉えられたり、不正を告発する人を批判するものだと捉えられるかもしれません。
でも、そうではないと思います。

わたしが人生の危機を乗り越えられたのは、自分を被害者と規定したからでした。そしてそうできたのは、これまでのフェミニズムだったり社会運動の積み重ねで、DVはよくないという共通の物語ができていたからだと思います。そういう共通の物語があるおかげで支援体制が作られたし、自分をDVの被害者だと考えることができました。そのおかげで回復することができました。だから物語という枠は必要だと思います。
自分を被害者とすることで解決できることもあるし、被害対加害の構図があることで声をあげやすくなったり、その状況に置かれている人への励ましになることもあると思います。

しかし一方で、自分を被害者と規定することがときには自分を傷つけることもあります。一つの物語にとらわれすぎるのはよくなく、ときにはそこから距離をとることも大事だ、と思いました。

被害者意識に飲み込まれないために
わたしは、何か社会で不正義だったり、変えたいと思うことがあるときに、集まるとかデモをするとか意見を発信するのはとても大事なことだと思います。
一方で石原の被害者の位置に自分を置かない、告発しない態度にもすごくひかれるものがあり、その両者の矛盾をどうとらえたらいいのかわかりませんでした。
この本で書いてあった「被害者意識と被害者であることは違う」という考えかたを知り、この間をつなぐ回路を得られたように思いました。反対することと、自分が被害者であることは切り分けることができるし、切り分けていいと思いました。

自分が被害を受けたことは事実でも、そのことを他の事例にもあてはめて、攻撃したり反対したり、自分のことと置き換えすぎるのはよくないんだなと思いました。
また、告発するときに、ある集団を敵とみなして攻撃する態度はちょっと違うのではないかと思いました。
集団の中にいても、そこに飲み込まれないで、個人個人を見ることが大事だなと思いました。

例えば、男女差別に反対するときに、男対女の構図で見てしまうことはよくないだろうと思いました。もちろん社会の中で、構造的に男が女を抑圧しているという部分はありますが、悪いのは犯罪者であって、男全体ではありません。自分が仮に被害者として男女差別に反対するときも、悪いのは自分に何かをしてきた男性であり、男性全体が悪いのではないと思うようにしようと思いました。
また千野さんのおっしゃるように女性から男性への加害もあります。それを見落としてはいけません。
ただ、こういう例をもとに、女性だって加害をしているから男女差別はないと言う人もいますが、今のところ数は圧倒的に男→女が多いので、少数の例を取り上げてそう言うのはちょっと違うかなと思いました。

最後に、人が声をあげているのに対して、被害者意識が強い、というのはちょっとちがうと思っています。
自分で気づいてこそ意味があるのかなと思います。

この本を読んで、自分が長らくもやもやとしていたことを言葉にするヒントをもらいました。
前著の『人はなぜ物語を求めるのか』も読んでみようと思います。

   

   



追記
このインタビューでも同様のことが触れられていました。
自分の思ったこと、そう間違ってなかったのがわかってうれしかったです。

finders.me